まるで何も知らないのだ。


お団子屋に来る前は何してた?

江戸のどこに住んでる?

光英さんとはどんな関係?



……何も知らない。





彼女の居場所がわからない以上、俺は動けなかった。



「何が…監察方なんだ。」




あの夜、痛みに耐えながら思ったことがあった。




…こんな気配の消し方を覚えていなければ、あんな話聞かなくて済んだんじゃないか?


何か物音でも立てれば、彼らは気づいて話をやめ、俺は何も知らなくてよかったんじゃないか?





そして残ったのが、残酷な真実。






…もう、何も考えたくなかった。