目の前が真っ赤に染まる。それと同時にやつが倒れる音がした。
「私は…暗殺者ですよ。」
また風に紛れて呟き、やつの懐を探る。
「えーーっと、あ、これかな?」
そう言って取り出したものは、豪華な施しがされた扇子だった。
依頼者の大事な家宝らしい。これを盗られる以前から、この男はひどい仕打ちをしていたようだ。
「ほーーん、これが噂の扇子ね。」
手から奪い取られる感覚と共に聞こえた声の主は、私と同じ暗殺者。唯一私と年齢が近いやつ。
「光英(みつひで)、大事なもんなんだから雑に扱わないでよ〜。」
「壊れたりしねーって!」
「どうだかっ!つい最近主(あるじ)の大事な筆壊したくせに!」
「うっ、わかったから、それ絶対主に言うなよ。」
……………いつかチクってやろ。