「…久しぶりだな。星。」
「…はい。ご無沙汰しております。」
組長の正面に座り、まっすぐに彼を見つめた。
静かな彼は、少し怖い。
いつもうるさいほど明るかった彼が今こうなのは、私の全てを許していないからだろう。
そりゃそうだ。私は山崎さんを傷つけた。
…組長の気持ちは、わかっているつもりだ。
すると息をはき、組長は私に言った。
「すまんな、力みすぎた。綺麗な女に、そんな顔させるのは俺のガラじゃない。
…星子、というのだな。少し、話を聞いてほしい。」
…なんて人なんだろう。ただそう思った。
「組長に変わって、ここからは俺が話をする。
…星子、これに見覚えはあるな?」
差し出されたのは髪留めだった。
それは…母さまの形見ともいえるもの。
「…はい。」
江戸城に行く前の夜。長旅になるだろうと思い、この豪華な施しのこれは持っていくのを諦めたのだ。
…大事なもの、置き忘れたままだった。
それさえも思いつかないくらいに、ただ山崎さんのことばかり考えてしまっていた。