照れくさくて、恥ずかしくて。
なんともいえない空気で。でもそれが嬉しくて…。
こんな気持ち…、確かに一番幸せかもしれない。
今まで張っていた気持ちも途切れ、さっきまで走り続けたせいもあってか、睡魔が襲ってきている。
「このあと、屯所に戻るおつもりですか?」
「いや、さすがにそれは…。かといって宿はもう…。」
もうずいぶん夜更けになってしまった今、この時間に開いている宿を探すのは至難の技だ。
「……野宿、ですね。」
「いやっ!女性にそんなことは…っ」
そう言いかけた山崎さんを余所に、私は桜の木を見てひらめいた。
「山崎さん、最高の寝床がありますよ!」

