「あっ…り、がとう…ございます。」
嗚咽混じりの声が、夜に響く。
山崎さんはただ隣にいてくれて、ゆっくり背中をさすってくれる。
…私、子どもみたい。
昔、母さまにあやされてた頃を少し思い出す。
…私に剣の稽古をつけてくれたのは、実は私の母であった。
鍛錬が上手くいかないとき、拗ねた私によくお団子を持って食べさせてくれたっけ。
…簡単に言ってしまえば、食べ物であやされていたのだ。
我ながら単純である。
母さまの実家は剣の道場。
そこそこ名のある道場で育った母さまは、剣の腕は一級品であった。
そんな母さまに教わった剣。これは私の宝物だ。

