「…山崎さん? どうしたんです……か」



「……ついた。」








…………この世に…こんな綺麗な場所があったなんて、知らなかった。



誰もいない丘に、ただ一本。


だけどそれは何本もの存在を感じさせる、大きくて温かいもの。


月明かりに照らされて、光り輝いてるように見える。


咲きかけの蕾が少し冷たい春風に吹かれて揺らめいていて、なんて……





「綺麗だ…。」






ただ、その言葉だけに尽くす。




「…あぁ。」



山崎さんも、ただそれだけを口にして、その美しい桜の木を見上げていた。