あんなに騒がしかった店内には、もう山崎さんしかいない。
しんとする中、もう暮れかけの夕日を浴びている山崎さんは…男の人に言うのは語弊があるかもしれないが、「綺麗」だ。
「…ふ」
誰にも聞こえないように、小さく息を吐いて、彼に近寄る。
そして山崎さんの机に、持ち帰り用の桜餅を置こうとしたときだった。
「いらないよ。」
「……はい?」
顔がぽかんとしてるのが自分でもわかる。
え?…山崎さんって、用意させといてそれを棒にふるような阿保だっけ?
「苛立ち」というよりは、「驚き」というような感覚。
そんな私を見て、山崎さんはクスッと笑った。
「…っ!な、なんですか!」
なんで私笑われたの…!?
急に恥ずかしくなって、無意識に顔が赤くなる。
……でも、やっぱり山崎さんは山崎さんで、優しい人なのだ。
「これは星子さんの分。」
「……私の?」