忙しい店内。

机に置かれた桜餅。

それを頼んだ人。

それを持ってきた私。



ただただいつも通りの光景なのに、どうしてこんなに焦ってるのか。


…その答えはここにいる。






「…私は、会いたくなかったです。………山崎さん。」



「そんな顔で言われても、俺はその言葉を信じない。」





…私、今どんな顔だろう。
やっぱり鏡買った方がいいな。




彼がいるだけでこんなに動揺してる。



暗殺者ともあろう者が、こんなあからさまに表情変えて…私ももう、『手練れ』だなんて言われるようなやつじゃないな。



すると、山崎さんは桜餅を1つ手に取り、口に運ぶ。



「…ここのも上手い。」



「…そうですか。」




山崎さんが言うなら本当だろう。
…私も食べてみよう。