「おっはよー。華恋、今日は早いね。」

「ん?ああ、おはよ。志穂、いや~、さあ、宿題忘れちゃって…。」

「…宿題あったっけ? あれ、なに?数学?英語?」

「……化学。」

「うっそ、1時間目かよ!か、華恋ちゃん今日も可愛いねえ。可憐だねえ。」

「はいはい。知ってるよ。貸さないけどね。」

「華恋ちゃん、いや、華恋様。購買のプリンでいかがでしょうか。」

「…授けよう。」

「有り難や有り難や」

ノートを手渡した私はちょっとトイレと志穂を教室に残して1人で教室を出た。最後まで私に向かって手を合わせる志穂にくすっと笑いが零れた。

教室に帰ると志穂はまだ私の席に居た。

「自分の席でやりなよ。」

「ああ、お帰り~。」

そう言って志穂はへらっと笑った。そして私の机を指差してコレなに?そう問いかけてきた。

例の落書きだ。

「ああ、その猫は私が書いたやつね。その横の変なのは知らない。」

「ふーん。キモいね。」

「そうかな。なんで?キモくないよ。」

「ええ、だってコメントまでついてるよ?誰がやったか分かんないんでしょ。嫌じゃん。」

「まあ。でも、字綺麗だし、女の人かもよ。それに悪い人じゃないかなって。多分夜間の人だと思うんだけど。」

「そっか~。ま、なんか変なこと書かれたりしたら直ぐに消しちゃいなよ。」

そう言って志穂は自分の席に帰って行った。授業中ずっと私はこの落書きの相手を考えていた。性別、年齢、性格…。返事が返ってくるのが楽しみだ。