「まず、カップルはカップルでも手を繋いでないと入れないっていうルールがあるんだよ」
ちょっと躊躇(ためら)いがちに健吾さんは微笑んだ。
この海の家には変なルールがいくつかあって、そのルールを守らないと追い出されるらしい。
こんなに可笑しい海の家に来たのは初めてだし、何のためにそんなルールがあるのか知りたくなった。
カップルしか入れないというルールを作っても、結局は海の家自体にはメリットはないはず。
なのにカップルのみ。
誰が考えたんだろう。
「とにかく、バカップルみたいのが来てくれんのが一番嬉しいらしいよ」
「何か、面白いルールですね」
「だよなぁ。カップルだけじゃない方が絶対儲かんのにな」
健吾さんはポケットから携帯を取り出し、バカにしたように笑って携帯を耳に当てた。
誰かに電話してる様子だった。
その頃、慣れてて余裕感たっぷりの葵と碧さんは、もう先にカウンターの座ってた。
私も電話してる健吾さんをその場に置いて、葵の横の椅子に座った。
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