俯いた葵が溜め息をつく。

私だってつきたい気分なのに。



「もう二度と喧嘩しねぇよ。心配かけねぇって約束する」



そんな葵らしくない優しい言葉をかけられたら許さないと思ってたものも許したくなる。



本当は一週間葵と話せなくて会えなくて寂しがったから怒ってるんじゃない。

喧嘩しないって約束したのに喧嘩をした葵に怒ってるんじゃない。

私に詳しく集まりのことを説明しないから怒ってるんじゃない。



「怪我……大丈夫なの?」


「大したことねぇよ」



たぶん、いやきっと大事な仲間のために喧嘩して帰ってきたズタズタの葵のことを

怪我して痛々しく見える葵のことを一番最初に心配してあげれなかった自分に怒ってる。

葵のことを怒ってたりしない。



だから今だってこうやって、優しい声で喋る葵を許してしまってる。




「今日はあたしが自転車前漕いでいこうか?」




大したことねぇとか言ってるけど顔から体まで怪我だらけの葵に自転車を漕がせられない。


いくら私の家までは自分一人で漕いできていたって、私を乗せた自転車を漕がせるわけにはいかない。


私だって、葵の一人や二人くらい後ろに乗せてる自転車を漕げないわけじゃない。



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