私には分からない。

何で喧嘩しなきゃなんないときがあるのか分からない。

話し合いで済ませることが出来ない事があるのが分からない。



そんな私の考え方は葵たちにとっては逆に分からないのかもしれない。


だって、もしかしたら喧嘩しなきゃ解決出来ないこともあるのかもしれない。


誰が強くて、誰が弱いのか確かめなきゃならないときがあるのかもしれない。



でも―……




「約束…したじゃん」



葵は手首を握る力を強くすることなく顔色も何一つ変えない。



「喧嘩しないって、もう心配かけないって、付き合う時に言ってたじゃん」


「ああ」


「なのに喧嘩して、こんな怪我して帰ってきて―…」


「ごめんな。今回だけはどうしても断れなかったんだ」




葵はそう言って、手首を握る力を強くしてフードを深く被った。


その仕草にドキッとした私は完全に頭が一週間でイカレたみたい。


でも、だからって。


あの一週間の寂しさが消えるわけじゃない。




「でも、やっぱり心配なの。葵が喧嘩してるって聞いただけで心配になるの」


「分かってる」


「分かってないよ!さっきから余裕あるじゃん!」




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