玲香の素朴な疑問に『フレンチキスっていうのはね、』って本気で説明しようとしたお母さんを止めた。
それからは、葵以外のみんなは食べたい分だけお寿司を食べて、葵は遠慮してるのか、あまり食べようとはしていなかった。
それに気づいたお母さんは、
「男のくせにそんなに少食なの?っていうかさ、遠慮なんか今更だから」
葵に回転してきたマグロを渡して、そう言った。
葵は私の親にお金を払ってもらうから遠慮してるらしく、私にはその気持ちがよく分かるような気がした。
確かに葵の親に食事に連れていってもらってお金を払ってもらうなんて、考えただけで葵のようになるって分かる。
遠慮してしまう。
でも、葵が自分の親に遠慮してくれたことを少し嬉しく思ったりもした。
葵は私が思ったよりも、私の親のことを大切に思ってくれてるのかもしれない。
さっきの部屋でもそうだけど、私の親のことを、生き方を凄いって言ってくれた。
そんな風に思ってくれる葵を、生き方を私は凄いって思う。
ってか思える。
そんなことをちょうど考えてた時、今までそんなに口を開かなかったお父さんが、突然口を開いた。
「美鈴、大学行かないんだってな」
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