「ちょっと無視しないで下さいよ。せーんぱい」
葵が殴りかかんないで、禁句をスルーして、しかも横を通り過ぎたっていうのに。
なんなの金髪男!!
殺されたいの?!
ねぇ、そうなの?!
それともケンカしたいの?!
「負けたんですよね?って聞いてるんですけどー、聞こえてます?」
いや、これはむしろ葵を挑発してる以外の何物でもない。
だって私もムカムカしてきたもん。
バカにしたような感じで喋る金髪男に、さすがにケンカする気がない葵も頭にきたみたいだった。
『ちっ』って小さく舌打ちすると、振り返る前に私の耳元で小さく『先行ってろ』って低く言った。
先行ってろって言葉が、この不良たちとケンカすることを表してて、すぐにその場から動けなかった。
でも殴り合ってる姿は見たくないから、もう少ししたら先に教室に入ってようって思ってたのに…。
今度こそ殴りに金髪男に向かって歩き出した葵が、金髪男に近づいて一発殴るのを見てしまった。
「てめぇ、もういっぺん言ってみろや」
そして、葵に殴られて吹き飛ばされた金髪男に向かって発した
葵の得意技の地響きと地割れが起こりそうなくらいの低い声も聞いてしまった。
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