「何で?!は?どういう意味?何か企んでんのか?!そうなのか!何か企んでんだな?!」


「別れたの」


「そうか!別れたのか!だから一緒じゃなかっ……………は?」


「あたしから別れようって言ったの」



「………な……んかの……冗談……だろ?何か……企んでん……だろ?」



2列目のシートに座ってる菊哉は、助席に座ってる私の方に乗り出してきた。



当然私と菊哉の会話を聞いてるであろう慎悟くんは、


前に乗り出す菊哉に目もくれず1人で1番後ろのシートに座って煙草を吸ってる。



それは私に気を遣ってなのか知らないけど、私からしたらありがたかった。



「冗談じゃない。ウソでもない。でも……やっぱり別れるのは無理だった」


「……へ?」



素っ頓狂(すっとんきょう)な声を出す菊哉。



その顔がおもしろくて、思わず吹き出しそうになったけど、

この場で吹き出すのはあまりにも空気を読めなさすぎるって思って、我慢した。



「別れた理由は長くなるから言わないけど、そのことはもう我慢するしかないって思ったの」


「………」


「葵を好きな気持ちは誰にも負けないし、また葵に好きになってもらえばいいって思ったの」


「………」


「だから葵に『戻りたい』って言おうって決めて葵の家に向かった」


「……あ、あぁ」



まったく菊哉にとって意味の分かんない話をしてるのにも関わらず、



菊哉は静かに聞いてくれた。



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