いくら何でも、ああいう喧嘩とか殴り合い系の話をするんじゃないんだと思ってた。
もっと、大事な友達を助けるために敵のやつらに殴られたとか。
仲間を助けるために自分が犠牲になったとか。
そういう青春系の話なんじゃないかって勝手に思ってた。
そんな不満を抱えながら、毛布にくるまっていると眠気に襲われることが分かった。
葵がまだぐちぐちと言ってる独り言も、はっきりとは聞こえなくなってきた。
「美鈴に知られたくなかったわけじゃねぇんだよ。ただ、やっぱ怖いかなって思ってさ」
「………うん」
「昔のことだし、おまけに一番荒れてた時だから美鈴に知らねぇ世界わざわざ教えたくねぇし」
「………ん」
「でも美鈴が知りたいって言うから教えてやったのに、怖がられても…………って、美鈴?」
「…」
「おまっ…!」
私は見事睡魔に負けてしまい毛布の中で体育座りのまま寝てしまった。
起きたのは外がもう暗くなってる時で、私はソファに横に寝ていて毛布がかけられていた。
葵がかけてくれたんだ。
毛布から葵の匂いがほのかにしたからそう思った。
でも、
その葵が見当たらない。
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