いつも移動する時はバイク、学校来る時もたまに先生に隠れてバイクで来たりする菊哉。



バイクで走るのが好きで、葵の話によると、小学生の時暴走族に入りたいって言ってたらしい。



その菊哉が今全力疾走してきた感満載なのは、かなりおかしい。



「お前さぁ、俺の話聞いてる?」



人の話を聞かない私に、呆れたような声を出す菊哉。



「ううん、聞いてない。それより何でバイクじゃないの?」



どこまでも菊哉の話を聞いてやんない頑固な私に、ため息をついた菊哉は私の質問に答えてくれた。




「ゆずの兄ちゃんに貸してって言われて、ここ3日ぐらい貸してんだよ。だから歩きなわけ」


「ふーん」


「ふーん、って!聞いてきたのお前だろ?!」


「葵は倉庫の中だよ。あ、ついでに慎悟くんもいるから」


「てめっ!また話逸らし……って倉庫!?もう倉庫にいんの!?じゃあ俺も行ってくるわ!」




ギャグ漫画みたいなやり取りを終えた私は、再び全力疾走する菊哉の背中を眺めてた。



………菊哉はたぶん、一生“クール”にはなれないだろうなと思いながら。



菊哉に“クール”って言葉はいちばん合わないし似合わない。



逆にいちばん合って似合うのは、“バカ”って言葉だと思う。



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