でも私はすぐに手で涙を拭って、葵から自ら離れた。



すぐ離れた私を不機嫌そうに見る葵は、チラッとまだ泣いてる舞子さんを見て、また私を見た。



たぶん、葵は私が泣いて、あの場から突然走り出した理由をまだ分かってない。



自分が無意識に言った言葉が、どれだけ私にとって言ってほしくない言葉かも分かってない。



それがなんか悔しくて。

悲しくて、泣きたくて。



「よく言えるよね……あんな言葉」


「………」


「彼女目の前にしてもしてなくても、よくあんな言葉、他の人に言えるよね……」


「………」


「まだ好きってことでしょ?だから、康介さんに聞かれたとき、否定しなかったんでしょ?」


「……お前、何言って」



せめて断ることは出来たはずなのに。

けど、舞子さんを康介さんから解放させるためなのかもしれないって思った。

そのために葵が嘘ついてるんだって思った。



でもやっぱり、無理だよ。

マイナス思考にしか考えられない。

葵のことになると、マイナス思考にしか考えられない。



だって、好きなんだもん。

たとえ舞子さんだからって、私以外の女の人に優しくしないでほしいんだもん。



葵が私を、守ってほしいだけ。



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