自分では止められないほど涙が溢れ出てきて、その場で立ち尽くしながら、1人涙を流してた。



泣いてる舞子さんの背中をさする緑さんは、舞子さんしか見てないから、私には気づかない。



葵は壁側にいる康介さんを見てるから私に気づくはずもなかった。



けど、唯一私の方を向いてた康介さんは泣いてる私に気づいて………



「……誰だ?」



私に向かって低い声を出した。



その言葉でゆっくり振り返った葵の視線が、私の視線と交わった。



「………」


「…っ」


「……美鈴!」



葵に泣いてる姿を見られてしまい、葵と視線が交わった瞬間、私はその場から走り出してた。



葵は私の名前を何度も呼んでるけど、もうその呼ぶ名前にも心は揺れ動かない。



揺れ動かない……はずなのに。




「美鈴!」




葵のその声が寂しそうで、苦しそうで、追いかけてきて私の腕を掴むその手が熱くて。



本当だったら、走って走って走って遠くまで行って葵が見えなくなる場所まで行こうと思ったけど、



葵が勢いよく抱き締めるから



ただ、葵の腕の中で泣くことしか出来なかった。



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