「だったら葵があたしのそばにいて、あたしを守ってよ」
我慢してたのに葵があんなことを言うから、つい私も口が滑ってしまった。
だって、そばにいれないから心配してくれてるのも分かってる。
私のそばにいれないのも、ちゃんと分かってる。
恐る恐る視線を上げると、葵は俯いていて、少し見える顔は困ったようだった。
……困らせた?
こんなときに葵を困らせちゃいけないのに、私は困らせて迷惑をかけてしまったと焦ってて……
「………ねぇよ」
蚊の鳴き声みたいに小さな声出す葵に反応して、顔を上げた。
……え?今何て?
葵が何言ったのか分かんなくてキョトンとしてる私のおでこを、葵が手加減なしでデコピンした。
「痛っ!な、何するのよ!」
「ばーか」
「ば、ばか!?」
まだヒリヒリするおでこを手でさすってると、だんだん痛みが無くなってきた。
でも手加減なしで急にデコピンしてきた葵が許せなくて睨んだら、ジーって綺麗な瞳で見つめられて、
「誘ってんじゃねぇよ」
そう耳元で囁かれて、真っ赤になった私を置いて、
葵は大きな音をたててバイクで自分の家に帰った。
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