口から煙を吐き出し、ゆっくり視線を上げる葵。



「……助けてやりたい、存在かな」



そしてまた視線をゆっくり私に戻しながら言った。



助けてやりたい存在。

それは、たぶん………舞子さんが苦しんでるからだと思う。



葵は分かってる。

舞子さんが彼氏に暴力を振るわれて苦しんでることを。



それなのに私は、何で舞子さんが嘘をついてるなんて疑ったりしたんだろう。




「美鈴」



低い声で私を呼ぶ葵。



葵の横を通り抜けて、外からの冷たい風が家の中に入ってきた。



「舞子さんの事は気にしなくて良いから」



私に近付く葵の手が、ゆっくり私の髪に優しく触れた。



「慎悟から聞いた。……あいつの言うことは気にするな」


「…え?」


「舞子さんが俺のことを好きなわけがねぇ」


「…な、んで?」


「舞子さんは、」



ずっと私の髪に触れてた手をいったん引っ込め、再び私の頭を撫でるように髪に触れた。



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