慎悟くんはその後すぐにバイクにエンジンをかけて自分の家へと帰っていった。



残された私は家の中に入って、最近全然部屋の掃除が出来てなかったから、部屋の掃除をしてた。



懐かしい昔の写真がベッドの下から出てきたりして、何だかんだいって楽しんでた。



中学時代のアルバムを見てたら、昔付き合ってた人と写ってる写真があって

こんな時期もあったなーって、一人懐かしく思ってた。



だから忘れてた。

ううん。

正式には忘れようとしてた。



あの慎悟くんが言った言葉を。

舞子さんが、葵を今でも好きなんだってことを。



昔の思い出を振り返って懐かしく思ってた私は、忘れようとしてた慎悟くんの言葉を

すっかり忘れてた。



………家の、チャイムの音が鳴るまでは。




ピンポーン




静かでシーンとしてる部屋に、当然前触れもなく鳴ったチャイム。


私はビクッと肩を動かした。



こんな時間に、こんなタイミングに、私の家に来るのはアイツしかいない。


だからこそ、会いづらかった。


さっきまで会ってたけど、会いづらかった。



『葵を好きだって見え見えじゃん』



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