用事って何だよ?さっきは用事ねぇっつってたじゃねぇかよ!おい、美鈴!無視すんのかよ!


そう叫ぶ葵を無視して、前に座る慎悟くんに『葵は無視して行っちゃっていいよ』と言って、

大声で叫ぶ葵の声を聞きつつ、バイクを走らせた。




「葵、よかったの?」



私を気遣ってか安全運転をしてくれてる慎悟くんは、バイクを走らせながら小さく呟いた。



「あんなやつ、無視くらいどうってことないよ」


「あんなやつ?」


「だって、舞子さんには優しくて私には冷たいんだよ?ひいきだよ、ひいき」



あんなやつの誘い一つくらい断ったって、どうってことない。



ひいきする葵がいけないんだ。

私の気持ちを分かんない葵がいけないんだ。

舞子さんばかり心配する葵がいけないんだ。



私は不安なのに、舞子さんが彼氏から暴力を受けてるって知ってるから……

助けてあげてほしくて、不安な気持ち押し殺してるのに…。



舞子さんは本気で悩んでる感じがしない。

本当に彼氏に暴力を振るわれてるのかどうかも分かんない。

痣とか無いし…

怪我してる様子も無いし…



もしかしたらって思ったけど。



舞子さんは嘘ついてるんじゃないかな。



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