2人の関係は終わっていて、葵と今付き合ってるのは私だって分かってる。


葵が好きなのは私。

私が好きなのは葵。


長谷川舞子が好きなのは彼氏。

暴力を振るう、彼氏。



………長谷川舞子の彼氏は、何で彼女の長谷川舞子に暴力を振るうんだろう。




「舞子さん」




何回か来たことのある喫茶店に連れてこられた私は、葵がそう呼んだのと同時に視線を上げた。



視線の先にはおしとやかに座る、サングラスをかけて、帽子を深く被ってる女の人がいた。




「あ、葵かぁ。あんま名前呼ばないようにしてくれる?周りに私ってバレるとまずいから…」




声からして長谷川舞子だとすぐに分かった。


透き通った少し高い声。

大人の女を感じさせる声。

そして、おしとやかな雰囲気。


うちの学校祭に来てたときに感じたのと、まったく同じ。



葵は『すいません』と謝ると、長谷川舞子の目の前の椅子に座り、

4人座れる席だったので、私は葵の隣にサッと座った。



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