九州の方にお父さんの仕事の都合で転勤している私の親は、一年の内数えられるくらいしかこっちに帰ってこない。
夏休みに一週間くらいと正月に3日と冬休みに5日くらい。
今年の夏休みは何か忙しいからといって帰ってこなかった。
そのお母さんからの電話が何ヶ月かぶりにきた。
《あんた今何処いんの?》
「え?」
《家じゃないでしょ!あんた何処いんのよ!あ、彼氏?彼氏んとこいんでしょ!?》
「あー…うん、まぁ」
《本当に!?彼氏んとこ!?》
耳がキーンてするぐらいお母さんの高い声は、電話越しであっても葵に聞こえてるんじゃないかって心配になった。
そもそも電話してきたってことは何か用事があるってことだよね?
「ていうか、何のようで電話かけてきたの?」
《それより彼氏ってあの金髪のイケメン?何だっけ…あ…葵くんだっけ?》
「話逸らさないでよっ。何のようで電話かけてきたの?」
よく話を逸らすお母さんと電話してると、お母さんが電話してきた主旨が分かんなくなる。
っていうか、お母さんは電話の最初から電話してきた主旨を話してくれないから困る。
すっかりお母さんに葵の話に逸らされた私は、しぶしぶ葵の話にノってあげなきゃなんなくなった。
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