葵の家は玄関に電気がついていて葵のお母さんとお父さんが帰ってきていることが分かった。
「ねぇ、今日ってさ」
「ん?」
「あたし……」
「ああ、泊まり」
………やっぱり。
今日の夜は長いな発言から、もしかしたらと思ったけど葵んちに泊まるっぽかった。
パジャマとかいつもは持ってくるからいいものの、今日は一切持ってきてない。
唯一持ってきてるのっていったら携帯くらいで、鞄も打ち上げだったから教室に置いてきてしまった。
葵がドアを開けて中に入ろうとした時、丁度私のブレザーのポケットが震えて着信音が鳴った。
「あ、ごめん。先に入ってていいよ」
葵にそう言うと、葵んちの玄関前で携帯を耳に当てた私に聞こえてきたのは、
《美鈴!?元気!?》
鼓膜が破れんじゃないかってくらいデカく高い声だった。
着信音から、その人に設定してたからすぐにその人だって分かったんだけど、実際聞くと疲れる。
ため息をつきたい気持ちの私は、チラッと玄関の方を見た。
そこには閉まったドアに寄りかかってる葵がいて、右手に煙草を挟みながら、口パクで『誰』と聞いてきた。
だから口パクで『お母さん』と苦笑いで言った。
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