涙が溢れ出したのは、たぶん葵とまた一緒にいれるんだって安心出来たからだと思う。
涙が止まらなかったのは、たぶん葵が嬉しすぎることを言ってくれたからだと思う。
頬がいつになく赤かったのは、たぶん葵がいつになくかっこよく見えたからだと思う。
「悪ぃな、こいつ借りてく」
「どうぞどうぞ。…じゃ、お二人さんごゆっくりー」
「え、あ、…は?」
泣き止まない(泣き止めない)私は葵の胸にすっぽり埋まって、葵に抱き締められていた。
背中を赤ちゃんをあやすように葵によしよしと撫でられていた。
ゆずは勘が鋭いのか、すぐにその場から去って学校へ歩き出した。
その光景を横目でキョロキョロと見る菊哉は、何が起こってんのか分かってないようだった。
その菊哉に葵は、あからさまに不機嫌そうな態度で声を出した。
「おい」
「え、あ、…はい?」
「はい?じゃねぇよ。空気読め」
そしてついに、空気読めと言われてやっとこの状況を把握出来たのか、菊哉はニヤニヤしながら、
「はいはい、お邪魔虫は消えますよー。お二人さん仲良くねー」
ご近所迷惑極まりない大声で、上のことを叫びだした。
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