目の前に立って、たこ焼きをパックに詰めてる人物も私と同じように目を丸くして私を見てる。



運が良いのか悪いのか分かんないこの状況で、私はすっかりお腹が空いてる事を忘れてた。



だって目の前には、



着くずした制服の上にはっぴを着てる、葵が立っているから。




「…いくつ?」




さっきまでは何も話そうとせず、目を丸くして私を見てるだけだった葵が、口を開く。



他の女の子のお客さんと話すような口ぶりで


私と気付いてないかのように


"ただ"のお客さんのように


私が"彼女"ではないかのように。




「…一つ」

「マヨネーズは?」

「いる」

「200円」




200円と言われて、ポケットの中から200円出して葵の手に渡した。



たこ焼きを一パック受け取って、私はこれ以上ここにいたくなくて他の場所に行こうとした。




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