悪戯っ子のように笑う葵は、右手の人差し指と中指で煙草を挟み、左手で近くにあったコーラの缶を掴んだ。



それは?と聞き返されて、答え返す言葉が見つからない私は、床を見つめていた。



しばらく沈黙が続き、その沈黙が終わったのは、葵の腕が私の二の腕を掴んだ時だった。



「部屋が見たいんだったら俺に言って?」



そう言って、掴んだ私の二の腕をベットまで無理矢理引き上げた。



その勢いで、勢い良く葵のいるベットに乗る形になった私は、葵の目の前に座らされた。



「たまに緑兄いるし、緑兄に美鈴を会わせたくないし」



そんなカッコいい事をサラッと言ってから、葵は煙草を吸った。



何で会わせたくないのかは分からない。


…分からないけど、実のお兄さんにヤキモチを妬いてるみたいで。


何だかそれが、とても嬉しくて顔が無意識にニヤケた。



「その顔はヤバいから止めろ」



でも、葵のその一言で一気に堪忍袋が切れて、唯一空いてる葵のお腹の真ん中にグーでパンチした。



葵が痛そうに眉間に皺を寄せる。



「ってぇ。この鬼嫁」


「何言ってんの?男に殴られるより全然平気でしょ?」


「いやいや。男に殴られるより全然効いた」



その後に、もう一発パンチをお見舞いしてやったのは言うまでもない。



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