正直言って、葵の家のことをあまり知りたいとは思わなくなった。
付き合って最初の頃は、葵のことを何でも知りたいと思ったし、家族のことは尚更知りたいと思った。
けど年月が経つにつれて、人には言いたくないことが一つや二つはあるんだと分かった。
だから、家族のことを話そうとしない葵に無理矢理家族のことを話してもらおうとは思わない。
もしかしたら、私から聞いたら答えてくれるのかもしれないけど、何か怖くて聞けない。
私に話したくないことがあるように、葵にも話したくないことがあるんじゃないかと理解も出来る。
「ねぇ、さっきお兄さんに挨拶しなくてよかったの?」
「あんな奴に挨拶しなくていい。つか、何であの部屋に居たわけ?」
「…え、」
もっとも触れてほしくない話題に触れる葵の話を、キレられてもいいから無視したかった。
けど、出来なかったのは罪悪感があったからで、葵には正直に話したかった。
疑い深そうに、私の次の言葉を待つ葵は、ポケットから煙草を取り出し吸い出した。
「何かね気になったの。静かだし、どんな部屋なのかなぁって…」
「それで勝手に部屋見たんだ?」
「…そ、それはっ」
「それは?」
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