本当に二人は似てて、こんなに似てるのに何で私はさっきまで葵と親戚なんだとか考えなかったんだろう。


何で顔は見えてたのに、葵のお兄さんなんじゃないかとか思いつかなかったんだろう。


でもたぶん、私はそんな単純なことも考えられないくらいに失神寸前だったんだと思う。




「あっ、あのっ」




だから、初対面の葵の親戚だっていうのに、すっかり挨拶と自己紹介を忘れてた。



自己紹介は葵がさっき名前を言ってくれたからいいとして、“初めまして”くらいは―……




「美鈴、俺の部屋戻るぞ」


「…えっ?」




第一印象だけでも良くしておきたくて挨拶しようとしたのに、葵に無理矢理手首を引っ張られた。



そして、そのまま隣の葵の部屋に押し込まれて、葵はドアの鍵をガチャンと閉めた。



おいおいおいっ!

彼女が挨拶しようとしてんのに何で邪魔してんだよ!

恥をかかせたいのか!

『あっ、あのっ』まで言わせといて、それはねぇだろ!

しかも『あっ、あのっ』っていうのお兄さんの前で二回目だぞ!




「怖っ、睨むなよ」




ベッドの上に胡座かいて座って煙草を吸う葵を、下に座る私は上目遣いでギロッと睨んだ。




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