「あ?誰だ、お前」




壁一面が白く一人部屋としては広すぎる部屋の真ん中で、

ドカッと座るその人は不機嫌そうに低い声で、私を睨みながらそう言った。



……こ、怖い。



もしかしたら人がいるかもしれないと思ったりもしたけど、

こんなに怖いなんて思わなかった。



だって、葵んちに入る時いつも葵は家には誰もいないと言ってた。



だから今日もいないのかと思ってた。


ましてや、いつも静かな空き部屋に人がいるなんて――…


思いもしなかった。




「おい、聞こえてんの?お前は誰だっつってんだよ」




しかもまさか、こんな怖い人?

あたしが誰だって?

じゃあ、あなたは誰だよ!



なんて、煙草スパスパ吸って、金属パイプが壁に寄りかかってる部屋にいるこの人に言えるわけない。




「無視?つか耳ねぇの?おーい、お嬢ちゃーん?」


「…あっ、あのっ」


「何だ、声出せんじゃん」




やっと出てきた声は自分でも震えてるのが分かるくらいに震えてて、


次の言葉が出てくるまでに数分掛かった。




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