私は一人で葵の自転車に乗り、向かい風を受けながら葵の家まで走った。



だいたい私がナンパされるの心配になるなら、私を一人で帰らせなきゃいいのに…。



とは思いつつも、遅くまで私を学校に残らせたくないと心配してのことだと思うから、私は黙ってた。



葵の家に着き

植木鉢の下にあった鍵でドアを開けると、広く何も置かれていない殺風景な玄関が目に入った。



まるで旅館のような玄関から続く長い廊下の一番奥にあるのが葵の部屋で、その隣には空き部屋がある。



空き部屋には入ったことがない。



………どんな部屋なんだろう。



特に“入るな”とか“見るな”とか注意されてないから、見てもいいのかと思ってしまう。



ていうか、見たくなる。



人は“見るな”と言われるほど見たくなる生き物みたいだけど、


私は“見ていいよ”と言われた方が見たくなる生き物。



だから、静かにそのドアを開けてしまった。




「…っ!」




びっくりしすぎてなのか、


衝撃的だからなのか、


あまりにも似てるからなのか、



開いた口が閉まらないというのは、こういうことだろうと、この時初めて思った。




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