「分かった。でも一つだけ約束してほしいんだけど、いい?」



葵が首を傾げた。



どんなに卑怯なやり方をしようとしてるギャル達でも、私と同じ女であることは変わらない。



だから、手だけは出さないでほしい。



「手は絶対に出さないで。怒鳴ってもいいから、脅してもいいから、手だけは出さないで」



目を逸らさないで葵を真っ直ぐ見つめて話す私を見たからなのか、葵は優しく笑った。



そして、中庭に出れる窓の鍵を静かに開けた。



「んなの当たり前だろ。女に手は出さねぇから安心しろ」



開いた窓から心地良い風がスーッと空き教室内に入ってきた。



この窓を開けたということは私がここから帰れという意味で、私は自分の鞄を持って窓から中庭に出た。



「あと、もしギャル達が殴りかかってきて葵が殴られても、殴り返しちゃダメだからね」


「分かってるよ」


「あたしが代わりに明日殴り返しに行くから」



もし葵に何かあったら私が代わりになればいいだけ。



男が女を殴っちゃいけないというなら、女の私が女を殴っても誰も何も言わないだろう。



―…実際は殴れるかなんて分かんないけど。



「じゃあ気をつけて帰れよ。あ、俺んちの鍵がある場所知ってる?」


「植木鉢の下だよね?」



そう言うと、葵は一言『ナンパされたら相手殴れ』と言い、窓をゆっくりと閉めた。



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