そういう言葉を言えば私が黙るって知ってるからなのか知らないけど、葵はズルいと思う。
面と向かって可愛いだなんて。
囁くように可愛いだなんて。
胸きゅんしちゃうほどの笑顔で、可愛いだなんて。
意地っ張りで普段は全っ然可愛くなんかない私のことを、からかうように“可愛い”だなんて。
「…あれ?怒った?」
とぼけたような声を出す葵は、可愛いと言われてタコのように真っ赤な顔の私を覗き込んだ。
「怒ってないよ、別に」
真っ赤な顔を見られないように、ギャル達が叩いてるドアの方に顔を向けた。
それでも、この状況を読み取ってるからの行動か知らないけど、葵は私を向かい合わせにした。
「ははっ、顔真っ赤」
そして、軽く笑った。
葵は私をからかうのが上手い。
どんなに私が突っ張っても、たった一言で私を真っ赤にさせる。
「赤くしたのは葵でしょ」
「ああ、そっか。でも美鈴が可愛いのがいけないからじゃね?」
「…〜っ」
殴ってやろうかコイツ。
元不良じゃなかったら殴ってやろうかコイツ。
でも元不良だから、お返しとかいって殴り返されたらタダじゃ済まないから止めておこう。
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