葵は私の名前を呼んだだけで、口を再び閉ざしてしまった。



でも私に向けられた視線はそのままで、私が恥ずかしくて視線を逸らしても尚、横から視線が感じられた。



何か言いたいなら言えばいいのに、無言でいる葵は何か言いたげな表情で尚も見つめてくる。



私はその視線に耐えきれず、



「そ、そんなに見とれるほど、あたしってば可愛いの?」



―…なんて、ほざいた。



いかにも『調子乗ってんじゃねぇぞ』的な顔をする葵。



謝ろうかと思ったけど、空気扱いしてくれたお返しにしておいた。



「な、なーんちゃって♪」



謝る代わりに誤魔化してみたけど、あまりに調子乗った誤魔化し方になってしまった。



失敗したと思った。



葵の口が怪しく笑ってたから。



「俺ら、以心伝心してんだな」


「…え?」


「美鈴の言う通り、美鈴が可愛いから見つめてた」



そう言って葵は笑った。


その笑顔は、反則だと言いたくなるほど見とれてしまった。



あんなの冗談だったのに、それを葵にとって当たり前のように言われると頭がこんがらがる。



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