その願いも虚しく、

廊下から黒板に視線を移した私の肩をポンと誰かが叩いた。



た、た、……叩くなよ!!



さすがに授業中はそんなこと叫べず、恐る恐る廊下の方に視線を移した。




「よっ、真面目さん」




廊下から顔を出す葵がへらへらと笑って私の頬をついた。




「よっ、不良さん」

「不良言うな」

「だって不良じゃん」




出来るだけ小さい声が喋る私と葵。



廊下側の席にいる私は丁度、前にいる先生の位置からだと死角で見えなくなってる。

だから、廊下と教室の間にある窓から顔を出す葵の姿も見えない。



………だけど、油断してるとバレる可能性があるから―……




「佐々木ーっ!お前は彼女とイチャついてんじゃねぇぞーっ!」




と、思ってた矢先、こっちに全速力で走ってくる天沢先生が葵のことをしっかりと捕らえていた。



そして、私もバレた。



くっそーっ!!
葵のせいだーっ!!




「やべっ」


「待て佐々木ーっ!」


「待つわけねぇだろ!」




でも天沢先生は目立つ金髪の葵しか視界に入っていなかったみたいで、


逃げる葵を、三十路にしては速すぎるスピードで追いかけていったまま消えた。。




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