土曜日のドナルド

しばらくして彼は、店でテーブルの上に置いていたドナルドを私に寄越した。
だから、なにこれ?
私は彼はドナルドに似ているけれど、このぬいぐるみは似てないななどと思いながら、手の上のドナルドを見つめた。
「それを俺だと思って大事にして」と唐突に彼が言う。
は?
私は頭の中が真っ白になった。
だから続けざまに彼が言い放った、他に好きなコが出来たというセリフに、怒りも、悲しみも、驚きも何の感情も浮かんで来なかった。
彼は茫然と立ちすくむ私に、そういうことだからお別れだ、いままでありがとうみたいな言葉をかけて足早に立ち去った。