時の空白ができる。 一瞬だけ、時が止まったように感じた。 気づいた時にはもう、夏美の体は宙に浮いていた。 黒猫は夏美の腕の中にいた。 夏美が命を懸けて守ろうとした命。 腕の中をするりと抜け、駆けていった。 「夏美っ!!!」 「おい!しっかりしろよ!夏美!!おい!!」 血だらけの手で俺の手を握って 『大丈夫、大丈夫』 何かのおまじないみたいに、優しい笑顔で、そう言った。 それが夏美の最期の言葉だったんだ。