嘘とワンダーランド

課長はまだわたしのことを妻だと認めていないかも知れない。

そりゃ、そうだよね。

結婚するはずだったお姉ちゃんは好きな人と駆け落ちをして、代わりに妹であるわたしと結婚をしたくらいなんだから。

そのうえ、社内でわたしと結婚をしていることは秘密にしているんだから。

お互いのプライベートを干渉しないって言う訳がわからないルールも作ってるんだから。

課長はわたしを、“お姉ちゃんの身代わり”だと思っているのかも知れない。


待ちに待ったお昼休み。

「あー、もう残業決定だ」

会社を出たとたん、京やんは両手で頭を抱えた。

「そんなにも大変そう?」

そう聞いたわたしに、
「大変過ぎて、熱が出てきそう…」

京やんはやれやれと言うように息を吐いた。