確かにわたしは課長の部下だけど…でも、わたしたちの本当の関係は“夫婦”でしょう?

そう言いたくなったけど、グッとこらえた。

「ああ、そうだよね。

正文、結婚したもんね」

千沙さんはアハハと声に出して笑った。

この人、課長が結婚したことを知ってるんだ…。

課長が千沙さんに結婚のことをどれだけ話したのかはよくわからないけれど、千沙さんは知っているようだった。

「これから彼女を駅まで送るところなんだ」

そう言った課長に、
「あー、何か邪魔してごめんね」

千沙さんは笑いながら言った。

「じゃ、今度近いうちに飲みに行こうね」

千沙さんは課長に向かって手を振ると、その場から立ち去った。