嘘とワンダーランド

――その現場に遭遇しちゃったってことだよね…?

開いたドアの前で躰を震わせながら、わたしは思った。

嫌でも耳に聞こえてくるその声に、目の前の現実を理解せざるを得なかった。

荷物を落としそうになる手を何とかこらえると、音をたてないようにドアを閉めた。

早足でマンションを出ると、息を吐いた。

さっきの出来事は夢なのかと思って指で頬をつねった。

つねられた痛みが頬を走った。

ああ、夢じゃない。

さっきの出来事は、間違いなく現実だ。

「――ウソ、だよね…?」

わたしと会わなかった間、圭介は他の女と浮気をしていた。

「風邪をひいたって言う話は、ウソだったんだ…」

それは、わたしがここへこないようにするためのウソだった。