嘘とワンダーランド

黒いピンヒールだった。

かかとのところが潰れているスニーカーは圭介のものだって言うのはわかった。

だけど、このピンヒールはわたしのものではない。

そもそもこんなハデな色の靴は履かないし、ピンヒールなんて履けないし…。

そう思った時、
「――ッ、あっ…」

奥の方から声が聞こえた。

えっ、何?

聞き間違いかと思って耳を澄ませて見ると、
「――もう感じてんのかよ…」

圭介のかすれた声が聞こえた。

「――んっ、ダメェ…」

その声に、自分の足が震えたのがわかった。

心臓がドキドキと、まるで長距離を終えた後のように早鐘を打っている。

背中に冷や汗がタラーッと流れたのがわかった。

もう夏は終わったはずなのに、躰が熱くて仕方がない。

気を落ちつかせるために深呼吸をすると、冷静にこの事態を考えた。