嘘とワンダーランド

「お前、場所と時間を考えろよ…」

呟くように言った京やんに、
「ごめん…」

わたしは謝った。

何事もなかったような顔をして牛丼を食べ始めたわたしたちに、周りからの視線が離れた。

「それで…お兄ちゃんはお姉ちゃんの彼氏って言う意味なんだな?」

そう言った京やんに、
「うん、お姉ちゃんの彼氏って言うのがめんどくさかったからお兄ちゃんって」

わたしは言い返した。

我ながら何ちゅーウソをついているんだよ…。

そのウソをついたのはわたしなんだけど、まさか自分がついたウソで苦しむことになるなんて…。

そう思いながら牛丼を口に入れたわたしに、
「あんまり誤解を招くような言い方をするんじゃねーぞ。

仕事が忙しいのは同業者だからわかるけど、時間に余裕がある時は構ってやれよ」

京やんが言った。

「うん」

わたしは首を縦に振ってうなずくと、牛丼を完食した。

それ以上のことを聞かれなかったことに、わたしはホッと胸をなで下ろした。

それにしても、今日は心臓に悪い出来事ばかりが起こるなあ…。