嘘とワンダーランド

今はまだ、お姉ちゃんのことを言わない方がいいかも知れないと思った。

京やんにだって、まだ話をしていないのだ。

「若菜?」

何も言わないわたしに、課長が顔を覗き込んできた。

「わっ…」

眼鏡越しの瞳に見つめられてしまったら、隠している何もかも全てを吐き出してしまいそうになる。

それをぐっとこらえると、
「課長、そろそろお昼休みが終わります。

話は家に帰ってからじゃダメですか?」

ほとんど苦し紛れの状態で、わたしは言った。

「まあ、それもそうか」

課長は納得したと言うように呟いて、わたしから離れた。

よかった、助かった…。

わたしはホッと胸をなで下ろした。

「若菜行くぞ」

「はい」

わたしたちは資料室を後にした。