嘘とワンダーランド

「それで、返事はしたのか?」

そう聞いてきた課長に、
「まだ…」

わたしは呟くように答えた。

本当は飲みの約束じゃなくて、お姉ちゃんの夫だと言う男の人からの電話なんだけど。

そのうえ、その人と明日の昼休みに会うって約束をしてしまった。

罪悪感でズキズキと痛んでいる胸を感じていたら、
「行ってきてもいいぞ。

結婚を報告していない友達もいるんだろ?」

課長が言った。

「えっ、いいの?」

意外な返事に聞き返したわたしに、
「ただし、終わったら必ず俺に電話するように」

課長が人差し指を出した。

「えっ、電話?」

何で?

「迎えに行きたいから。

だから、必ず電話しろよ?」

課長はそう言った後、わたしと手を繋いだ。

「ほら、帰るぞ」

「うん…」

わたしと課長は歩き出した。