嘘とワンダーランド

よかった…。

京やんのクビがまぬがれたことに、わたしはホッと胸をなで下ろした。

「にしても、京極のヤツは顔が広いんだな。

間違っても敵に回さねーように気をつけねーと」

課長はやれやれと言うように息を吐いた。

「それで、他にも何か聞いたか?」

そう聞いてきた課長に、
「千沙さんは、お互いのすれ違いが原因で別れたと周りに言っているそうです」

わたしは答えた。

「俺が悪いとは一言も言わなかったんだな」

呟くように言った課長に、
「そうみたいですね」

わたしは言い返した。

「俺の身勝手が原因で別れたのにな。

あいつ、泣きもしなければ責めもしなかった。

許してくれって土下座する俺を、ただ見てた」

課長は眼鏡を外した。