嘘とワンダーランド

京やんはともかくとして、名前のことまでヤキモチを焼いていたの?

そんなことを思ったわたしの顔を課長は覗き込むと、
「自分でも、子供だなって思ったよ。

でも、どうすればいいのかわからなかった。

悪い印象を抱かれているのは確かなことだったし、何としてでもいいから俺を見て欲しかった」
と、言った。

「正文さん…」

名前を呼ばれた課長は額に手を当てると、
「あんなマネをするくらいだったら、こうして話あった方が手っ取り早かったな」
と、呟くように言った。

「わたしも、そう思いました。

課長のことを避けるくらいだったら、どこかで話しあいをすればよかったなって」

そうしたら、こんなにも悩まなくて済んだのに…。

そう思いながら、
「ごめんなさい」

わたしは課長に謝った。