嘘とワンダーランド

課長がそんなことを考えていたなんて、知らなかった。

なのに…わたしはそんな課長の考えていることに気づかなくて、彼のことを避けていた。

「だけど…結婚から3ヶ月くらい経って、関係を割り切ることができない自分に気づいたんだ。

特に会社でお前が京極と仲良さそうにムダ話をしていたり、ランチに行っているところを見ていたら…なんて言うか、イラッとしたんだ。

何で仲良くしているんだよ、お前は俺の妻だろ、妻が夫以外の男とイチャついてるんじゃねーぞ…って、嫉妬もいいところだな」

課長はコホンと、恥ずかしそうに軽く咳払いをした。

「なのに、お前はお前で俺の気持ちに気づいていねーし…。

俺のことは名前で呼んでくれたことないのに、京極のことを“京やん”だなんて呼んでいるし…。

それどころか、俺のことを避けてるし…。

このまま行ったら気づいてくれないどころか、ずっと嫌われたまんまだろうなって思えてきて、それで…」

そこまで話した後、課長はやれやれと言うように息を吐いた。