嘘とワンダーランド

「知らなかったとは言え、必死で土下座をして謝ってるお前たち家族を見たら…もう同情してやるしか他はねーなって思ったよ。

ここでおじさんが怒ったら、お前たち家族と従業員は路頭に迷う展開になってしまうからな。

何より、目の前にいるのは直属の部下だった訳だから。

間違ってもそんな展開にはなりたくなかったから、お前でいいなんて言ったんだ。

俺のせいで人生がめちゃくちゃになったって恨まれたくなかったし」

「う、恨むなんてそんな…」

あの時のわたしは家族と従業員のことしか考えていなかった。

路頭に迷うことだけは避けたいと、何度も願っていた。

「それでお前たち家族が助かるなら、それでいいって思ったんだ。

会社にいる時は上司と部下、家にいる時はただの同居人。

そうやって関係を割り切って、結婚生活を送ろうってそう思ってた」

そう言った課長に、
「そうだったんですか…」

わたしは返事をした。